◆ 〜第三幕〜 ◆
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幽玄
一昼夜を賭して
郷田城へ帰り着いた力丸は、
松之信に事の顛末を告げる。
郷田家の重臣達は招集され、
その対策を講じる為の
軍議が開かれた。
敵の戦力が計り知れない状況に、
皆慌てふためくばかりであった。
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■ 海上決戦 ■ |
陽炎座は、切り札である巨大船「焔口鬼」を出航させた。
郷田は総力を結集し、これに挑む。
一、船を辿り、敵の巨大船を目指せ |
一、海中には獰猛な牙が潜む |
一、長期に亘る戦に備え、薬を多く携帯すべし |
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〜 任務開始時 〜 |
城に帰りついた力丸は、殿の間にて事の顛末を報告した。
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郷田松之信 |
「
そうか、陽炎座はそのような船を…
」 |
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武士一 |
「
我が水軍で対抗できるので
御座りましょうか?
」 |
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武士二 |
「
小舟しか御座りませぬ
流石に無理かと
」 |
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関谷直忠 |
「
戦う前から泣き言とは…
貴様達はそれでも武士か!
」 |
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…辺りが騒がしくなってきたようだ。
城下より早鐘の音が聞こえる。
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焔口鬼の砲弾が郷田の城を直撃した。
もはや猶予の時はない。
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郷田松之信 |
「
儂自ら水軍を率いる
出陣じゃ!
」 |
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郷田松之信 |
「
力丸、死ぬでないぞ
儂にはお主が必要じゃ
紫雲斎の志を継ぐ者は
もはやお主達しか
いないのだからな
」 |
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〜 大船に到達時 〜 |
焔口鬼の近くに停泊していた大船に乗り込んだ力丸。
船首には盲目の、あの男がいた。
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朱雀 |
「
血の混じりし風
断末魔
燃え尽きて逝くあの命の輝き…
視えるが故、見えぬものがある…
貴様の命
果たしてどれ程に輝くのか…
」 |
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※ 朱雀登場後にやられた時 |
朱雀 |
「
…ふふふ
…感じたぞ
感じたぞ!
貴様の命の輝きを!
」 |
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〜 朱雀戦に勝利した時 〜 |
朱雀 |
「
戦い続けろ、強者よ…
呪え…
血塗られた…貴様の業を!
ぐはっ…
」 |
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力丸 |
「
…言われるまでもない
拙者は修羅の道を行く
冥土で待っておれ
」 |
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〜 焔口鬼右船尾の広場に到達時 〜 |
船尾には、彩女と龍丸の姿があった。
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見ると、龍丸はすでにぐったりとしている。
彩女は背を向けたまま、何かを投げた…十六夜だ。
力丸はその刀を手にしたとき、ここで何が起こったのか、
自分が今すべきことが何かを悟った気がした。
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香我美の元へ向かう力丸。
道中、今までの情景が頭をよぎっていく…。
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能を舞っていた香我美は、力丸の方を見て言った。
力丸は無言のまま、香我美を見据えていた。
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香我美は舞の衣装を脱ぎ捨て、扇子を構えた。
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〜 香我美後半戦移行時 〜 |
力丸の技は、もはやかつて対したときのものではなかった。
皮肉にも此度の数々の戦いが力丸の腕を高めていたのだ。
その力量を充分に感じ取った香我美はついに大太刀に手をかける。
力丸は更に集中力を高める。
香我美はゆっくりと太刀を抜き放ち、下段に構えたのだった。
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※ 香我美登場後にやられた時 |
香我美 |
「
我が夢、一向に色褪せぬ
ふ…ふははははははは
あははははははは
」 |
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躯に成り果てた力丸の頭を抱え、香我美は笑い続けていた。
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〜 香我美戦に勝利した時 〜 |
※これより下はネタバレが含まれていますので、
ご覧になる方はドラッグしてお読み下さい
(エンディングですので)
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力丸の一撃に、香我美はついに刀を弾かれ、舞台に背をついた。
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香我美 |
「
…うっ…
同情など要らぬ…
悔いたる想いなど…遠い昔に捨てた…
自由、自由だけが…光…
だから、お前は奪えない…
奪えない…死してもなお
輝く…我が夢だけは
決して…決して…
奪え…ない…
…うっ…
」 |
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力丸 |
「
自由など知らぬ
知ろうとも思わぬ
あるのは誇りのみ
忍びとしての、誇りのみ
」 |
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力丸は香我美にそう言い残すと、焔口鬼を後にした。
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松之信は無言で、敵の船の方へと向きなおした。
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松之信の合図で放たれた火矢が、焔口鬼目掛けて雨のように降り注ぐ。
巨大船 焔口鬼は、炎上しながら崩れ去っていった。
まるで悲鳴のような音を立てながら…。
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力丸は、かつて龍丸が香我美と戦い、
海へ投げ出された崖の上に来ていた。
そこには、彩女が石を積んだ墓石に花を供えていた。
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彩女 |
「
あたいは強くなる
失わないために
二度と、二度と、失わないために
」 |
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力丸は彩女を背に歩き出した。
彩女は、力丸の方を振り返った。
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力丸は彩女をおいて、その場を立ち去った。
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彩女は力丸の後を追った。
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彩女はそういって、歩き出した。
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その時、海鳥がすぐ近くを旋回していた。
海鳥は旋回しながら、煌煌と輝く太陽へ飛び立っていった。
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